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少し恋しくなったのは気のせい。

「………………」

何?と振り返ると獣か何かがガサッと音を立てて茂みに消えた。
音を立てて消えるぐらいやったら始めから逃げんなやとか文句を言いつつ口を尖らせる。

どっかで呼ばれた気がした、から振り返った。
普通に学業終えて部活も終えて、すっかり暗くなってしもた寒空ん中の住宅街。
こない早くに暗くなる所為か遊んどる子供はおろか、買い物帰りのおばちゃんすら通り過ぎんからきっと空耳やな、て
かぶりを振って白い息を吐くと首に巻いたマフラーに口元を埋めて頬を緩ませた。

"ユウジ先輩"

んな呼び方するんも大概猫より可愛げのない同じ部活の後輩ぐらいやろか、て思うたらこないな所に居る訳あらへんやん、せやけど今確かに聞こえたんはそんな感じの音やったような。

声は、声はどんなんやったやろか。

誰も居らへんのをええ事に少し立ち止まって思い浮かべた。

「ユウジ先輩」

自分の声から発せられる他人の声、ああ、こんな声やった。
そない言うたらそいつもよう俺ん事見て呼ぶ癖に何もあらへんみたいなそぶりをして直ぐに消えてしまいよる。
気まぐれに構うおうとしたらするりと擦り寄るだけ擦り寄ってじっと見て構うて欲しい癖に甘え方をよう知らん、まるで野良猫やん、なぁ。

結局どないやねん、て、よう解らんからそんなそぶりされたら俺は構わずに放っとくんやけど。

思い出しとる自分に可笑しなって一人で呟いて一人で笑うとる、何や俺、寂しいんか?
普通に居って、うざったく絡んでくる奴がいざ居らんと妙に腹が立つもんで、何で今隣居らへんのかと少し文句を言ってやろうと思ったのにやっぱりそこには誰も居らんかった。

明日はもう少し構ったろかとか考えつつ家路を急いだ。
 

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